ある日突然、背中に痛みを感じた時、多くの人が「とりあえず整形外科だろうか」と考えるかもしれません。確かに、背中の痛みの原因として最も頻度が高いのは、筋肉や骨、椎間板といった運動器系のトラブルであり、その場合は整形外科が専門となります。例えば、重いものを持ち上げた後の筋肉痛、いわゆる「ぎっくり背中」、あるいは加齢に伴う骨の変形などがこれにあたります。しかし、「背中の痛み」という症状は非常に厄介で、その背後には内臓の病気や皮膚、血管のトラブルなど、多岐にわたる原因が隠れている可能性があるのです。そのため、痛みの性質や伴う症状によっては、整形外科以外の診療科を受診する必要が出てきます。例えば、痛みが食事の後に強くなる、発熱や吐き気を伴うといった場合は、胃や膵臓、胆嚢などの消化器系の病気を疑い、消化器内科が適切かもしれません。また、胸の痛みと共に背中にも痛みを感じる、冷や汗が出るなどの症状があれば、心筋梗塞や大動脈解離といった命に関わる循環器系の病気の可能性も考えられ、一刻も早く循環器内科を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。さらに、皮膚にピリピリとした痛みがあり、数日後に発疹が出てきた場合は帯状疱疹を疑い皮膚科へ、女性で月経周期と連動して痛みが出る場合は子宮内膜症などを考え婦人科へ、というケースもあります。このように、背中の痛みは体からの重要なサインであり、どの診療科を受診すべきかを見極めるためには、痛みの種類(ズキズキ、チクチク、重苦しいなど)、痛む場所(右側、左側、肩甲骨の間など)、痛みが始まったきっかけ、そして他にどのような症状があるかを注意深く観察することが非常に重要になります。もし判断に迷う場合は、まずはかかりつけ医や総合内科を受診し、初期診断と適切な専門科への紹介をしてもらうというのも賢明な選択肢と言えるでしょう。