現代人の生活に欠かせないスマートフォンやパソコンの長時間利用が、実は下まぶたにできるものもらいの間接的な原因となり得ると指摘されています。この現象は、主に三つのメカニズムによって説明できます。第一に「まばたきの減少によるマイボーム腺機能不全」です。私たちは集中して画面を凝視している間、無意識のうちにまばたきの回数が通常の3分の1から4分の1程度にまで減少しています。まばたきは、涙を目の表面全体に行き渡らせて潤いを保つという重要な役割に加え、まぶたの縁にあるマイボーム腺から脂を分泌させるためのポンプのような働きも担っています。このまばたきの回数が極端に減ることで、マイボーム腺からの脂の分泌が滞り、腺の出口が詰まりやすくなります。これが、痛みを伴わないしこりが特徴の「霰粒腫」を引き起こす直接的な原因となるのです。第二のメカニズムは「眼精疲労とそれに伴う物理的刺激」です。画面を長時間見続けることは、目のピント調節筋(毛様体筋)を酷使し、眼精疲労を引き起こします。目が疲れると、乾きやかゆみ、しょぼしょぼ感といった不快な症状が現れ、結果として無意識に目をこする回数が増えてしまいます。汚れた手で目をこする行為は、手に付着した細菌をまぶたに運び込むことに他ならず、痛みや腫れを伴う「麦粒腫」を発症させるリスクを直接的に高めます。そして第三に「生活リズムの乱れと免疫力の低下」です。特に就寝前のスマートフォン操作は、画面が発するブルーライトが脳を覚醒させ、自然な眠りを促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。これにより睡眠の質が低下し、慢性的な睡眠不足に陥ると、自律神経やホルモンバランスが乱れ、体全体の免疫力が低下します。免疫力が低下した状態では、普段は無害な常在菌である黄色ブドウ球菌などにも容易に感染しやすくなり、麦粒腫を繰り返す原因ともなりかねません。対策としては、20分ごとに20秒間、20フィート(約6メートル)先を見る「20-20-20ルール」を実践し、意識的にまばたきをすることが有効です。スマホとの上手な付き合い方が、現代人の目の健康、ひいてはものもらい予防に不可欠と言えるでしょう。