家族の誰か、あるいは自分自身がマイコプラズマ感染症と診断された場合、適切な治療を受けると共に、家庭内や学校、職場での感染拡大を防ぐための対策を講じることが社会的な責任として求められます。マイコプラズマの主な感染経路は、咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる病原体を吸い込む「飛沫感染」と、病原体が付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」です。これらの経路を断つことが、予防の基本となります。まず、感染者は症状が落ち着くまで、可能な限りマスクを着用することが最も重要です。咳やくしゃみをする際は、マスクがない場合でもティッシュやハンカチ、あるいは肘の内側で口と鼻をしっかりと覆う「咳エチケット」を徹底しましょう。また、家族全員が、石鹸と流水によるこまめな「手洗い」を習慣づけることが非常に効果的です。特に、外出先から帰宅した時、食事の前、トイレの後などは必ず行いましょう。アルコールベースの手指消毒剤も有効です。感染者が使用したティッシュは、蓋つきのゴミ箱にすぐに捨て、部屋は定期的に窓を開けて「換気」し、空気の入れ換えを行いましょう。洗面所や風呂場のタオルは、家族内でも共用を避けるのが賢明です。感染者が使った食器類は、通常通り食器用洗剤で洗えば問題ありませんが、心配な場合は分けて洗うとより安心です。一方、感染者本人が家庭で療養する際のセルフケアも早期回復には欠かせません。何よりも「十分な休養と睡眠」をとり、体力の回復に努めることが大切です。発熱や咳によって体内の水分が失われやすいため、水やお茶、経口補水液などでこまめに「水分補給」を行い、脱水を防ぎましょう。食事は、消化が良く栄養価の高いものを、無理のない範囲で摂るようにします。また、空気が乾燥すると咳が悪化しやすいため、「加湿器」を使用したり、濡れタオルを室内に干したりして、部屋の湿度を50~60%程度に保つと、喉の負担が和らぎます。マイコプラズマ感染症には、インフルエンザのような予防接種(ワクチン)はありません。だからこそ、日頃からの基本的な感染対策が、自分自身と周りの人々を守るための最も確実な方法となるのです。
家庭でできること、マイコプラズマの感染拡大を防ぐために