背中の痛みは、必ずしも骨や筋肉の問題とは限りません。体の奥深くにある内臓の病気が、関連痛(放散痛)として背中に痛みのサインを送ってくることがあり、この場合は内科的なアプローチが必要となります。内臓由来の痛みの特徴は、整形外科的な痛みとは異なり、安静にしていても痛みが楽にならず、特定の姿勢や動きで痛みが変わらないことが多い点です。むしろ、じっとしていてもズーンと重苦しい痛みが続いたり、周期的に痛みの波が来たりします。また、背中の痛みだけでなく、発熱、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、血尿といった全身症状を伴うことが多いのも重要なサインです。例えば、背中の中央から左側にかけて、かがむと強くなるような痛みがあり、吐き気や腹痛を伴う場合は、膵炎の可能性があります。特にアルコールを多く飲んだ後や、脂っこい食事の後に発症しやすい病気です。背中の右側、特に右の肩甲骨の下あたりに痛みが出て、吐き気や右上腹部痛がある場合は、胆石や胆嚢炎が疑われます。こちらも脂っこい食事の後に症状が出やすい傾向があります。また、左右どちらかの腰に近い背中の部分に激痛が走り、脇腹や下腹部に痛みが移動する、血尿が出る、といった場合は、腎臓に石ができる尿路結石の典型的な症状です。あまりの激痛に、救急車を呼ぶ人も少なくありません。腎盂腎炎の場合は、背中の痛みに加えて高熱や悪寒、倦怠感を伴います。このように、背中の痛みに加えて、腹部の症状や発熱などの全身症状がある場合は、内臓の病気を疑うべきです。どの内臓が原因か特定が難しい場合も多いため、まずはかかりつけ医や一般内科、総合内科を受診し、血液検査や超音波検査などを受けて、原因を突き止めてもらうことが重要です。