マイコプラズマ感染症は、主に気道に感染する病気ですが、その影響は呼吸器だけにとどまりません。血流に乗って全身に広がり、体の様々な場所で炎症を引き起こし、多彩な合併症を招くことがある全身性の感染症です。これらの合併症は稀ではありますが、時に重篤な状態に陥ることもあるため、知識として知っておくことが重要です。そして、合併症の種類によっては、呼吸器内科や小児科だけでなく、他の専門診療科との連携が必要となります。最もよく知られている合併症の一つが皮膚症状です。特に「多形滲出性紅斑(たけいしんしゅつせいこうはん)」という、標的のような形の赤い発疹が手足などに現れることがあります。重症化すると、口内や目の粘膜、陰部などにただれが広がる「スティーブンス・ジョンソン症候群」という生命に関わる状態に移行することもあるため、皮膚に異常が出た場合は直ちに「皮膚科」の受診が必要です。また、神経系への影響も報告されています。ウイルスが付着していないのに脳や脊髄を覆う膜に炎症が起こる「無菌性髄膜炎」や、脳そのものに炎症が及ぶ「脳炎」を発症すると、激しい頭痛や嘔吐、意識障害などを引き起こすことがあります。手足の麻痺やしびれが現れる「ギラン・バレー症候群」の原因となることもあります。これらの症状が出た場合は、「神経内科」や「脳神経外科」での専門的な診断と治療が急務となります。心臓に合併症が起きた場合は、「循環器内科」が担当します。心臓の筋肉に炎症が起こる「心筋炎」や、心臓を包む膜に炎症が起こる「心膜炎」を発症すると、胸痛や動悸、呼吸困難、心不全などを引き起こすことがあります。その他にも、血液の合併症として赤血球が壊されて貧血になる「溶血性貧血」(血液内科)、関節に痛みや腫れが出る「関節炎」(整形外科・膠原病内科)、肝臓の機能が低下する「肝機能障害」(消化器内科)など、全身のあらゆる臓器に影響が及ぶ可能性があるのです。咳や熱が治まった後に、別の場所に新たな症状が現れた場合は、マイコプラズマの合併症を疑い、症状に応じた適切な診療科を受診することが大切です。
咳だけじゃない!マイコプラズマの多彩な合併症と関連診療科