「グルグル回るわけでもなく、立ちくらみでもない。なんだか体がふわふわと浮いているような感じが続く」「雲の上を歩いているようで、地に足がついていない感覚がある」。このような、はっきりとした特徴に乏しく、持続的な浮動性のふらつきは、原因の特定が難しいことが少なくありません。耳や脳、心臓の検査をしても明らかな異常が見つからない場合、その背景には全身性の様々な要因が関わっている可能性があります。このような場合、最初にかかる診療科として適しているのが、幅広い視点から全身の状態を評価してくれる「総合内科」や「一般内科」です。総合内科医は、特定の臓器に限定せず、患者さんの訴えや症状を総合的に判断し、隠れた原因を探るトレーニングを積んでいます。考えられる原因の一つが「貧血」です。血液中の赤血球やヘモグロビンが減少すると、全身の組織に酸素を運ぶ能力が低下します。特に脳が酸素不足に陥りやすくなるため、頭が重い感じや、持続的なふらつき、少し動いただけでの動悸や息切れといった症状が現れます。血液検査で簡単に診断がつきます。また、「糖尿病」による神経障害や、「甲状腺機能低下症」といった内分泌系の病気も、全身の代謝のバランスを崩し、倦怠感と共にふらつきを引き起こすことがあります。服用している薬の副作用も重要なチェックポイントです。特に、血圧を下げる薬、睡眠薬、抗不安薬、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)などは、副作用としてふらつきや眠気を引き起こすことが知られています。複数の薬を服用している高齢者では、薬の相互作用が原因となることも少なくありません。さらに、精神的なストレスや不安、うつ状態が、自律神経のバランスを乱し、原因不明のふわふわとしたふらつきとして現れることもあります。これは「心因性めまい」とも呼ばれ、体の検査で異常がない場合に考慮されます。総合内科では、これらの可能性を念頭に、詳細な問診、身体診察、血液検査などを行い、原因を絞り込んでいきます。そして、必要に応じて、耳鼻科や脳神経内科、心療内科といった、より専門的な診療科への橋渡し役を担ってくれるのです。