背中の痛みの中には、一刻を争う、命に関わる非常に危険な病気のサインである場合があります。それは心臓や大動脈といった循環器系の病気であり、このような痛みの特徴を知っておくことは、自分や家族の命を守る上で極めて重要です。代表的な病気は、心筋梗塞、狭心症、そして解離性大動脈瘤です。まず、心筋梗塞や狭心症は、心臓に血液を送る冠動脈が詰まったり狭くなったりして、心臓の筋肉に十分な血液が供給されなくなる病気です。主な症状は胸の強い圧迫感や締め付けられるような痛みですが、痛みが左肩や腕、顎だけでなく、背中の中央部や左側の肩甲骨の間に放散することがあります。特に、動悸、息切れ、冷や汗、吐き気などを伴う場合は非常に危険な兆候です。安静にしていても痛みが続く、ニトログリセリンが効かないといった場合は、心筋梗塞の可能性が高く、ためらわずに救急車を呼ぶ必要があります。そして、背中の痛みとして最も警戒すべき病気の一つが、解離性大動脈瘤です。これは、心臓から全身に血液を送る最も太い血管である大動脈の壁が裂けてしまう病気で、致死率が非常に高い緊急疾患です。その痛みは「突然、バットで殴られたような」「引き裂かれるような」と表現されるほどの、これまでに経験したことのないような激痛です。痛みは、大動脈の裂け目が広がっていくのに伴って、胸から背中、そして腰へと移動していく特徴があります。多くの場合、高血圧の持病がある人に起こりやすく、失神や意識障害、左右の腕で血圧の差が見られるといった症状を伴うこともあります。このような経験したことのない突然の激痛が背中に現れた場合は、絶対に様子を見たり、自分で病院へ行こうとしたりしてはいけません。即座に救急車を要請し、一刻も早く専門的な治療が受けられる循環器内科や心臓血管外科のある高度医療機関へ搬送してもらうことが生死を分けます。
命に関わる危険なサイン!循環器内科と背中の痛み