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男性特有の頻尿の原因、前立腺のトラブルを疑う
中高年の男性において「水を飲むとトイレが近くなる」「夜中に何度もトイレに起きる」という症状がある場合、加齢に伴い多くの人が経験する「前立腺肥大症(BPH)」が原因となっている可能性が考えられます。前立腺は、男性の膀胱の真下に位置し、尿道を取り囲むように存在するクルミほどの大きさの臓器です。この前立腺が年齢とともに徐々に肥大してくると、内側を通る尿道を物理的に圧迫したり、膀胱を刺激したりして、様々な排尿トラブルを引き起こします。これを総称して下部尿路症状と呼びます。症状は大きく分けて二種類あります。一つは、尿道を物理的に圧迫することによる「排出症状」で、尿の勢いが弱い、尿が出始めるまでに時間がかかる(遷延性排尿)、排尿が途中で途切れる(間欠性排尿)、力を入れないと尿が出にくい、排尿後に尿が漏れる(終末時滴下)、残尿感がある、といった症状です。もう一つは、肥大した前立腺が膀胱を刺激することで生じる「蓄尿症状」です。これにより膀胱が過敏になり、十分に尿が溜まっていなくても強い尿意を感じるようになります。その結果、トイレの回数が増える(頻尿)、急に我慢できない尿意が起こる(尿意切迫感)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)といった症状が現れるのです。水を飲むと比較的早く尿意を感じるのは、この蓄尿症状の現れと言えます。前立腺肥大症は良性の疾患であり、がんとは異なりますが、放置すると生活の質(QOL)を著しく低下させるだけでなく、尿が全く出なくなる「尿閉」や、腎機能障害を引き起こすこともあります。治療は、薬物療法が中心で、尿道の圧迫を緩めるα1遮断薬や前立腺を小さくする5α還元酵素阻害薬などが用いられます。症状が重い場合には、手術も選択肢となります。50歳を過ぎた男性で頻尿に悩んでいる場合は、年のせいだと諦めずに、一度泌尿器科で相談することが推奨されます。
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我慢できない尿意を引き起こす過活動膀胱とは
水を飲んでからすぐに、急に我慢できないほどの強い尿意に襲われる。時にはトイレまで間に合わず、漏らしてしまうこともある。こうした症状に悩まされている場合、「過活動膀胱(OAB)」という病気の可能性があります。過活動膀胱は、膀胱に尿が十分に溜まっていないにもかかわらず、膀胱の筋肉(排尿筋)が本人の意思とは関係なく勝手に収縮してしまう病態です。これにより、「突然訪れる、我慢できない強い尿意(尿意切迫感)」が最も特徴的な症状として現れます。多くの場合、日中に8回以上トイレに行く「頻尿」や、夜間に排尿のために1回以上起きる「夜間頻尿」を伴います。原因は完全には解明されていませんが、加齢に伴う神経系の変化や、脳卒中やパーキンソン病などの脳血管障害、脊髄損傷などが原因で、排尿をコントロールする神経の働きが乱れることが一因とされています。また、男性の場合は前立腺肥大症が原因となることも少なくありません。しかし、多くは明らかな基礎疾患がなく発症します。診断は、症状の詳しい問診や、排尿日誌の記録、尿検査、超音波検査による残尿測定などで行われます。治療の基本は、生活習慣の改善から始まります。具体的には、水分摂取のタイミングや量を調整する、利尿作用のあるカフェインやアルコールの摂取を控える、骨盤底筋を鍛えるトレーニング、そして膀胱に少しずつ尿を溜める習慣をつける「膀胱訓練」といった行動療法です。これらの方法で改善が見られない場合には、膀胱の異常な収縮を抑える抗コリン薬やβ3作動薬などの薬物療法が選択されます。我慢できない尿意は生活の質(QOL)を大きく下げるため、一人で悩まず専門医に相談することが解決への第一歩となります。