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坐骨神経痛かな?と思ったらまず整形外科へ
お尻から太ももの裏、そしてふくらはぎや足先にかけて、電気が走るような鋭い痛みや、ジンジンとしびれるような不快感。そんな症状に悩まされた時、多くの人が「これは坐骨神経痛かもしれない」と考えるでしょう。しかし、その次に頭をよぎるのは「一体、何科の病院に行けば良いのだろう?」という、意外と難しい問題です。その問いに対する最も的確な答え、それは「まずは、整形外科を受診する」ということです。整形外科は、骨や関節、靭帯、そして神経といった、体を動かすための器官(運動器)の専門家です。坐骨神経痛は、腰から足へと伸びる人体で最も太い神経である「坐骨神経」が、何らかの原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることで生じます。その原因のほとんどは、腰の骨(腰椎)や、その周りの組織に問題があるために起こります。例えば、背骨の骨と骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」が飛び出して神経を圧迫する「腰椎椎間板ヘルニア」や、加齢などによって神経の通り道である「脊柱管」が狭くなってしまう「腰部脊柱管狭窄症」が、坐骨神経痛の二大原因として知られています。整形外科では、まず丁寧な問診と、痛みやしびれの範囲、筋力、感覚などを調べる身体診察を行います。そして、レントゲン撮影によって骨の異常がないかを確認し、必要であればMRIなどの精密検査で、神経や椎間板の状態を詳細に画像で確認します。このように、坐骨神経痛の根本原因を、骨や神経のレベルで正確に診断できるのが、整形外科の最大の強みです。原因が特定できれば、それに基づいた適切な治療、例えば薬物療法やリハビリテーション、あるいは神経ブロック注射といった治療へと進むことができます。自己判断でマッサージや整体に通う前に、まずは運動器の専門家である整形外科医の診察を受け、あなたの痛みの本当の原因を突き止めること。それが、つらい症状から解放されるための、最も確実で安全な第一歩となるのです。
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私が坐骨神経痛で整形外科を選んだ話
全ての始まりは、些細な腰の違和感でした。最初は、デスクワークの疲れが溜まっているだけだろうと、軽く考えていました。しかし、その違和感は、数週間後には、右のお尻から太ももの裏にかけての、鈍い痛みに変わっていきました。そして、ある朝、靴下を履こうと前かがみになった瞬間、右足に、まるで灼熱の鉄の棒を突き刺されたかのような、激烈な痛みが走ったのです。その場にうずくまり、しばらく動くことができませんでした。それからの日々は、まさに痛みとの戦いでした。普通に歩くことさえ困難で、椅子に座っていると、お尻がえぐられるように痛む。夜は、どんな体勢をとっても痛みが和らがず、ほとんど眠ることができませんでした。インターネットで症状を調べると、出てくる言葉は「坐骨神経痛」。そして、その原因として挙げられる「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」といった、重々しい病名が、私の不安をさらに煽りました。何科に行けばいいのか。整形外科か、それとも近所の整骨院か。迷った末に、私が選んだのは、近所にある、少し大きな整形外科のクリニックでした。理由は単純で、「まずは、この痛みの『本当の原因』を知りたかった」からです。整骨院でマッサージを受けるのは、原因が分かってからでも遅くはない、と。診察室で、震える声で症状を説明すると、医師は丁寧に私の話を聞き、いくつかの神経学的なテスト(脚を上げたり、アキレス腱を叩いたり)を行った後、「おそらく、ヘルニアでしょう。念のため、MRIを撮ってみましょう」と言いました。後日、提携病院で撮影したMRIの画像には、腰椎の四番目と五番目の間で、見事に飛び出した椎間板が、神経を圧迫している様子が、くっきりと映し出されていました。自分の体の中で何が起きているのかを、目で見て理解できた時の、あの不思議な安堵感は、今でも忘れられません。原因が分かれば、あとは治療に専念するだけです。処方された薬と、理学療法士によるリハビリを数ヶ月続けた結果、あれほど私を苦しめた痛みは、嘘のように消えていきました。あの時、安易な道を選ばず、まずは専門医による「正確な診断」を求めて、整形外科の扉を叩いた自分の判断は、決して間違いではなかった。そう、心から思っています。
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痛みが強いならペインクリニック科という選択肢
坐骨神経痛のつらい痛みは、時に日常生活を送ることさえ困難にするほど、激烈なものになることがあります。「夜も眠れないほど痛い」「痛みで歩くのがやっとだ」。そんな、耐え難い痛みにとにかく早く対処したいと願う時、整形外科と並行して、あるいは整形外科での治療で痛みのコントロールが難しい場合に、非常に頼りになるのが「ペインクリニック科」という選択肢です。ペインクリニック科は、その名の通り「痛み(ペイン)」の治療を専門とする診療科です。麻酔科医が中心となって、様々な病気に伴う急な痛みや、長く続く慢性の痛みに対して、専門的なアプローチで症状の緩和を目指します。坐骨神経痛に対するペインクリニック科の最大の武器、それは「神経ブロック注射」です。これは、痛みを伝達している神経のすぐそばや、その神経を包む硬膜の外側に、局所麻酔薬や抗炎症薬を直接注射することで、神経の興奮を強制的にブロックし、痛みの伝達を遮断するという治療法です。痛みの原因となっている神経を直接ターゲットにするため、飲み薬や湿布などとは比較にならないほど、即効性があり、かつ強力な鎮痛効果が期待できます。坐骨神経痛の場合、腰の神経の根元に行う「神経根ブロック」や、背骨の神経の通り道に行う「硬膜外ブロック」などが、症状に応じて選択されます。このブロック注射は、単に痛みを取るだけでなく、痛みの悪循環を断ち切るという、重要な役割も果たします。強い痛みが続くと、その部分の血流が悪くなり、筋肉がこわばり、さらに新たな痛みを引き起こすという悪循環に陥りますが、ブロック注射で一時的にでも痛みを取り除くことで、血流が改善し、筋肉の緊張が和らぎ、自然治癒力が高まる効果も期待できるのです。もちろん、ブロック注射は根本原因を治す治療ではありません。そのため、整形外科で原因を診断してもらい、リハビリなどと並行して、痛みの管理のためにペインクリニック科を受診する、という連携が理想的です。痛みを我慢することは、決して美徳ではありません。専門家の力を借りて、一日も早く、つらい痛みから解放される道を探してみてください。
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整形外科と脳神経外科どう違う?
坐骨神経痛の原因が、腰の骨や神経にあると知った時、新たな疑問として「整形外科と脳神経外科、どちらに行けば良いのだろう?」と迷う方がいるかもしれません。どちらも背骨(脊椎)の病気を扱っており、その境界は時に曖昧ですが、それぞれの専門領域と得意分野には、明確な違いが存在します。この違いを理解しておくことは、あなたの症状や、求める治療の方向性に応じて、より適切な科を選ぶための助けとなります。まず、「整形外科」は、前述の通り、骨や関節、筋肉、神経といった「運動器」全般を扱う、非常に守備範囲の広い診療科です。坐骨神経痛に関しても、問診から、レントゲンやMRIによる画像診断、そして保存療法(薬物療法、リハビリ、ブロック注射など)から、手術療法まで、一貫して対応することが可能です。多くの坐骨神経痛の患者さんが、まず最初に訪れるべき窓口であり、ほとんどのケースは整形外科の領域で診断・治療が完結します。特に、リハビリテーション科と連携した、運動機能の改善を目指す治療に強みを持っています。一方、「脳神経外科」は、その名の通り、脳や脊髄、そしてそこから枝分かれする末梢神経といった「神経系」そのものを、主な専門領域とする診療科です。坐骨神経痛の原因となる腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症も、神経を圧迫する病気であるため、脳神経外科の診療対象となります。脳神経外科の最大の特徴であり、強みは、顕微鏡を用いた、非常に精密な「マイクロサージェリー(微小外科手術)」にあります。神経というデリケートな組織を、できるだけ傷つけずに、圧迫を取り除く手術を得意としています。そのため、整形外科での保存療法で改善が見られず、手術が必要と判断された場合や、足の麻痺が進行しているような重症例の場合に、整形外科から脳神経外科へ紹介される、というケースも少なくありません。どちらの科も、坐骨神経痛の専門家であることに変わりはありませんが、大まかな傾向として、「まずは総合的な診断と保存療法を」と考えるなら整形外科、「手術も視野に入れた、より専門的な神経の治療を」と考えるなら脳神経外科、という棲み分けができるかもしれません。最初に整形外科を受診し、そこで医師と相談しながら、必要に応じて他の科との連携を考えていくのが、最も一般的な流れと言えるでしょう。
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蕁麻疹と熱が出る時に考えられる病気
大人の蕁麻疹に発熱が伴う場合、それは単なる皮膚のアレルギー反応ではなく、体内で何らかの炎症や免疫系の異常が起きていることを示唆しています。その原因として、いくつかの病気の可能性が考えられます。正しい対処のためにも、どのような病気が隠れている可能性があるのかを知っておくことは重要です。まず、最も頻度が高いと考えられるのが、「感染症」です。風邪やインフルエンザといったウイルス感染症や、溶連菌感染症などの細菌感染症にかかった際に、その病原体そのものや、病原体が出す毒素に対するアレルギー反応として、蕁麻疹が現れることがあります。この場合、発熱や喉の痛み、倦怠感といった、元の感染症の症状が主体となります。蕁麻疹は、その感染症が治癒に向かうにつれて、自然に消えていくことがほとんどです。次に、注意が必要なのが「薬剤アレルギー(薬疹)」です。風邪薬や抗生物質、痛み止めといった、様々な薬を服用した後に、蕁麻疹と発熱が現れた場合、その薬に対するアレルギー反応の可能性があります。薬疹は、時に重症化し、全身の皮膚がただれるような深刻な状態(中毒性表皮壊死融解症など)に移行することもあるため、原因と思われる薬の服用を直ちに中止し、速やかに医療機関を受診する必要があります。また、より専門的な疾患として、「膠原病」や「血管炎」といった、自己免疫疾患の可能性も考えられます。これらは、本来、体を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身の組織を攻撃してしまう病気です。皮膚の血管に炎症が起きることで、蕁麻疹のような皮疹と、発熱、関節痛といった全身症状が現れることがあります。この場合は、皮膚科だけでなく、リウマチ・膠原病内科といった専門科での精密検査と治療が必要となります。そして、最も緊急性が高いのが、前述の「アナフィラキシー」です。食物やハチの毒などが原因で、蕁麻疹と同時に、息苦しさや血圧低下、意識障害などが急速に進行します。これは、一刻を争う救急疾患です。このように、蕁麻疹と発熱という組み合わせは、軽い感染症から、命に関わる重篤な疾患まで、実に様々な病気のサインとなり得るのです。
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貧血で病院に行く前のよくある疑問
貧血の症状に気づき、病院へ行こうと決心したものの、受診を前にして、いくつかの具体的な疑問や不安が頭をよぎる方もいるでしょう。ここでは、貧血で病院に行く前によくある疑問について、予めお答えしておきます。まず、多くの人が気になるのが「初診時の費用は、一体どれくらいかかるのか」という点でしょう。もちろん、医療機関や検査内容によって異なりますが、一般的な内科クリニックで、健康保険が適用される場合、初診料と、基本的な血液検査の費用を合わせて、おおよそ三千円から六千円程度が目安となります。精密検査が必要になった場合は、別途費用がかかりますが、最初の診察で、いきなり高額な請求をされることはまずありません。次に、「健康診断で貧血を指摘されたけれど、自覚症状がない場合でも、病院に行くべきか」という疑問です。答えは、明確に「イエス」です。健康診断の結果は、あなたの体が発している、客観的で重要なサインです。自覚症状がないのは、体が貧血の状態に、時間をかけてゆっくりと慣れてしまっているだけであり、決して健康な状態ではありません。むしろ、症状がない段階で異常を発見できたことは、幸運と捉えるべきです。放置すれば、いずれ症状が現れ、その背後にある病気が進行してしまう可能性もあります。必ず、指示に従って再検査や精密検査を受けてください。また、「病院に行く前に、自分で食事を改善すれば治るのではないか」と考える方もいるかもしれません。鉄分豊富な食事を心がけることは、もちろん素晴らしいことです。しかし、その貧血の原因が、本当に鉄分の不足だけなのか、それとも消化管からの出血といった、より深刻な問題が隠れていないのかは、医師の診断を受けなければ分かりません。自己流の食事療法だけで様子を見ている間に、治療すべき病気を見逃してしまうリスクがあるのです。まずは病院で原因を正確に突き止め、その上で、医師の指導のもと、食事改善に取り組むのが、最も安全で確実な方法です。そして、お子様に貧血のサインが見られる場合は、「小児科」を受診するのが第一選択です。成長期の子供は、体の急激な成長に伴って、鉄分の需要が増大し、貧血になりやすいという、大人とは異なる特性があります。小児科医は、そうした子供特有の貧血について、専門的な知識を持っています。これらの疑問を解消し、安心して、医療機関の扉を叩いてください。
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これは危険!すぐに病院へ行くべき坐骨神経痛
坐骨神経痛は、多くの人が経験する、比較的ありふれた症状です。しかし、その中には、単なる神経の圧迫ではなく、より深刻な、あるいは緊急性の高い病気が隠れているサインである場合があります。これから挙げるような「危険な症状」が、通常の坐骨神経痛に加えて現れた場合は、「少し様子を見よう」などと、絶対に自己判断してはいけません。それは、後遺症が残る可能性や、命に関わる事態を知らせる、体からの緊急警報です。迷わず、すぐに救急外来を受診するか、場合によっては救急車を呼ぶことを検討してください。まず、最も警戒すべき危険なサインが、「排尿・排便の障害」です。具体的には、「尿意があるのに、うまく尿が出ない(排尿困難)」「自分の意思とは関係なく、尿や便が漏れてしまう(失禁)」「肛門の周りの感覚が麻痺して、触っても感じない」といった症状です。これは、腰の神経の中でも、膀胱や直腸の働きをコントロールする、非常に重要な神経の束(馬尾神経)が、巨大な椎間板ヘルニアなどによって、重度に圧迫されていることを示唆します。この「馬尾症候群」と呼ばれる状態は、発症から四十八時間以内に緊急手術を行わなければ、排尿・排便機能が、生涯にわたって回復しなくなる可能性がある、極めて緊急性の高い状態です。次に、「足の麻痺が、急速に進行している」場合も、危険なサインです。「足首が上がらず、スリッパが脱げてしまう(下垂足)」「つま先立ちができない」「膝に力が入らず、歩いていると急に膝が折れる(膝折れ)」といった、明らかな運動麻痺が見られる場合、神経のダメージが深刻であることを意味します。放置すれば、麻痺が永久に残ってしまう可能性があります。さらに、「耐え難いほどの激痛で、全く動けない、眠れない」といった場合や、「転倒や事故などの、明らかな外傷の後に、痛みやしびれが現れた」場合、あるいは「原因不明の発熱や、体重減少を伴う」場合も、脊椎の骨折や、化膿性脊椎炎、あるいは悪性腫瘍といった、通常の坐骨神経痛とは異なる、重篤な病気の可能性が考えられます。これらの危険なサインを見逃さない、冷静な判断力が、あなたの未来を守る上で、何よりも重要となるのです。