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健康診断で「不整脈」を指摘されたら何科へ行くべきか
年に一度の健康診断。その結果通知を見て、「心電図異常:不整脈の疑い(要精密検査)」といった記載があり、不安に感じている方も少なくないでしょう。自覚症状が何もないのに、なぜ?と疑問に思うかもしれません。しかし、健康診断で不整脈を指摘された場合は、症状の有無にかかわらず、必ず専門医の診察を受けることが重要です。その際に受診すべき診療科は、やはり「循環器内科」です。健康診断の心電図で指摘される不整脈には、「期外収縮」「心房細動」「洞性不整脈」「脚ブロック」など様々な種類があります。これらのうち、多くは生理的なものであったり、すぐに治療が必要ない良性のものだったりします。例えば、期外収縮は最もよく見られる不整脈で、健康な人でも起こる「脈のしゃっくり」のようなもので、ほとんどの場合は心配いりません。しかし、中には注意が必要な不整脈も隠れています。その代表が「心房細動」です。心房細動は、放置すると心臓の中に血の塊(血栓)ができやすくなり、その血栓が脳に飛んで太い血管を詰まらせ、重い後遺症を残すことの多い「脳梗塞」の最大の原因となります。怖いのは、この心房細動が、自覚症状がないまま進行しているケース(無症候性心房細動)が少なくないことです。健康診断は、このような症状のない危険な不整脈を発見する貴重な機会なのです。循環器内科を受診する際は、必ず健康診断の結果票一式を持参してください。医師は、指摘された不整脈の種類を確認し、詳しい問診を行います。そして、再度12誘導心電図を記録するほか、ホルター心電図で24時間の心臓の動きをチェックしたり、心エコー検査で心臓の構造や機能に異常がないかを詳しく評価します。これらの精密検査の結果、本当に治療が不要な不整脈なのか、あるいは脳梗塞予防の治療(抗凝固療法)や不整脈そのものに対する治療が必要なのかを、専門的な視点から判断してくれます。症状がないから大丈夫、と自己判断で放置してしまうのが最も危険です。健康診断という機会を活かし、ご自身の心臓の状態を正しく把握するためにも、必ず循環器内科の扉を叩いてください。
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内臓の病気が原因?内科へ行くべき背中の痛み
背中の痛みは、必ずしも骨や筋肉の問題とは限りません。体の奥深くにある内臓の病気が、関連痛(放散痛)として背中に痛みのサインを送ってくることがあり、この場合は内科的なアプローチが必要となります。内臓由来の痛みの特徴は、整形外科的な痛みとは異なり、安静にしていても痛みが楽にならず、特定の姿勢や動きで痛みが変わらないことが多い点です。むしろ、じっとしていてもズーンと重苦しい痛みが続いたり、周期的に痛みの波が来たりします。また、背中の痛みだけでなく、発熱、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、血尿といった全身症状を伴うことが多いのも重要なサインです。例えば、背中の中央から左側にかけて、かがむと強くなるような痛みがあり、吐き気や腹痛を伴う場合は、膵炎の可能性があります。特にアルコールを多く飲んだ後や、脂っこい食事の後に発症しやすい病気です。背中の右側、特に右の肩甲骨の下あたりに痛みが出て、吐き気や右上腹部痛がある場合は、胆石や胆嚢炎が疑われます。こちらも脂っこい食事の後に症状が出やすい傾向があります。また、左右どちらかの腰に近い背中の部分に激痛が走り、脇腹や下腹部に痛みが移動する、血尿が出る、といった場合は、腎臓に石ができる尿路結石の典型的な症状です。あまりの激痛に、救急車を呼ぶ人も少なくありません。腎盂腎炎の場合は、背中の痛みに加えて高熱や悪寒、倦怠感を伴います。このように、背中の痛みに加えて、腹部の症状や発熱などの全身症状がある場合は、内臓の病気を疑うべきです。どの内臓が原因か特定が難しい場合も多いため、まずはかかりつけ医や一般内科、総合内科を受診し、血液検査や超音波検査などを受けて、原因を突き止めてもらうことが重要です。
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整形外科を受診すべき背中の痛みの特徴
背中の痛みで最も多くの人がお世話になるのが整形外科です。整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、神経といった「運動器」に関わる病気や怪我を専門とする診療科であり、背中の痛みの原因の多くがここに集約されます。では、どのような背中の痛みであれば、まず整形外科を訪れるべきなのでしょうか。その判断基準となる特徴的な症状や状況があります。まず、痛みの原因やきっかけがはっきりしている場合です。例えば、「重い荷物を持ち上げてから痛くなった」「スポーツで体を捻ってから痛む」「長時間同じ姿勢で作業をしていたら痛くなった」など、特定の動作や負担が原因で痛みが生じた場合は、筋肉や筋膜の損傷(筋筋膜性腰痛症、いわゆるぎっくり背中)、あるいは椎間関節の捻挫などが考えられます。また、痛みが体の動きと連動している場合も整形外科の領域です。「体を前に曲げると痛い」「後ろに反ると響く」「起き上がる時に激痛が走る」といったように、特定の姿勢や動作で痛みが強まったり、逆に楽な姿勢があったりするのは、運動器系のトラブルの典型的なサインです。さらに、痛みだけでなく、足のしびれや麻痺、感覚の鈍さ、足に力が入らないといった神経症状を伴う場合は、腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の可能性が高まります。これらの病気は、背骨(脊椎)の中にある神経が圧迫されることで発症し、専門的な診断と治療が必要です。高齢者の場合は、特に強いきっかけがなくても、転倒したり尻もちをついたりした後に痛みが続く場合、骨粗鬆症を背景とした脊椎の圧迫骨折を起こしている可能性も考慮しなければなりません。これらのように、痛みが動作に関連し、明らかな原因があり、特に神経症状を伴う場合は、自己判断でマッサージなどに行くのではなく、まずはレントゲンやMRIといった画像検査が可能な整形外科を受診し、正確な診断を受けることが根本的な解決への第一歩となります。
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膀胱の痛みと頻尿を引き起こす間質性膀胱炎の正体
トイレが異常に近い、水を飲むとすぐに尿意をもよおすが、いざトイレに行っても少量しか出ない。そして排尿後もスッキリせず、下腹部や膀胱あたりに不快感や重苦しい痛みが残る。このような症状がある場合、「間質性膀胱炎」という慢性的な病気の可能性があります。これは、細菌感染が原因ではないにもかかわらず、膀胱の粘膜に炎症や機能障害が起こる病気で、近年では膀胱痛症候群とも呼ばれています。一般的な細菌性膀胱炎とは異なり、尿検査をしても細菌が見つからず、抗生物質を服用しても効果がないのが特徴です。原因はまだ完全には解明されていませんが、膀胱の粘膜表面を覆って尿の刺激から壁を守っているグリコサミノグリカン(GAG)層というバリア機能が何らかの理由で損傷し、尿中の刺激物質が膀胱の壁に浸透して神経を刺激することで、痛みや頻尿を引き起こすのではないかと考えられています。症状は個人差が大きいですが、尿が溜まってくると膀胱や下腹部、尿道、骨盤周辺に痛みや圧迫感を感じ、排尿するとその痛みが一時的に和らぐというサイクルを繰り返すことが多いです。このため、患者は無意識のうちに痛みを避けるため、尿が溜まる前に頻繁にトイレに行くようになります。診断は、症状の問診に加え、他の病気を除外するための尿検査や超音波検査、膀胱に水を入れて痛みや反応を見る膀胱水圧拡張術を伴う膀胱鏡検査などが行われます。治療は一筋縄ではいかず、食事療法(酸性度の高い食品やカリウムを多く含む食品、香辛料などを避ける)、理学療法、薬物療法(鎮痛薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬など)、膀胱内に薬液を注入する治療などを組み合わせて行います。難治性で長く付き合っていく必要のある病気のため、泌尿器科の専門医への相談が不可欠です。
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水を飲むとすぐ尿意が来るのは病気のサインか
水を飲んだ後、比較的短い時間でトイレに行きたくなるという経験は、多くの人が持っています。これは多くの場合、私たちの体が持つ精巧な水分バランス調整機能による正常な生理反応です。体内に取り込まれた水分は、腸で吸収されて血液中に入り、腎臓で濾過されて尿として生成されます。この一連のプロセスは、体内の水分バランスと血液の浸透圧を一定に保つための重要な仕組みです。特に、体がすでに水分で満たされている状態や、寒い環境で血管が収縮し、腎臓への血流が増加している時には、尿の生成が早まることがあります。また、コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン、アルコールなど利尿作用のある飲み物を摂取した場合も、尿の量は増え、尿意を感じやすくなります。しかし、この「すぐ」という感覚が極端であったり、一回の尿量が非常に少なかったり、頻繁に繰り返されたりする場合は、単なる生理現象ではない可能性も考えられます。例えば、膀胱が過敏になって少量の尿でも強い尿意を感じる「過活動膀胱」や、膀胱自体の容量が小さい、あるいは骨盤底筋の緩みなどが原因となっていることもあります。重要なのは、その頻度や程度が日常生活に支障をきたしていないか、他に気になる症状はないかという点です。もし、頻尿が急に始まった、夜中に何度も起きる、残尿感や痛みがある、異常に喉が渇くといった場合は、背景に何らかの病気が隠れているサインかもしれません。単なる体質や加齢のせいだと片付けずに、自分の体の変化に注意を払い、不安を感じるようであれば専門医に相談することが大切です。
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首のこりや痛みを伴うふらつきは整形外科?
肩や首の慢性的なこりや痛みに悩まされている人が、同時にふらつきを感じることは珍しくありません。このような場合、「このふらつきは首から来ているのではないか」と考え、「整形外科」を受診すべきか迷うことがあるでしょう。実際に、首周りの異常がふらつきの原因となることはあり、これは「頸性(けいせい)めまい」と呼ばれています。頸性めまいが起こるメカニズムはいくつか考えられています。一つは、首の筋肉の異常な緊張が、首にある位置覚センサー(固有受容器)の働きを狂わせ、脳に誤った体の位置情報を送ってしまうことで、平衡感覚にズレが生じるという説です。長時間のデスクワークやスマホ操作による不良姿勢が、首の筋肉に過度な負担をかけ、この状態を引き起こすことがあります。ふらつきと共に、首のこりや痛み、頭痛、頭重感などを伴うのが特徴です。また、加齢によって首の骨(頸椎)が変形する「変形性頸椎症」や、「頸椎椎間板ヘルニア」なども、ふらつきの原因となり得ます。これらは、首の骨の中を通る神経や、椎骨動脈という脳に血液を送る重要な血管を圧迫することで、めまいやふらつき、手足のしびれなどを引き起こすことがあります。特に、首を上に向ける、あるいは特定の方向に回すといった動作でふらつきが悪化する場合は、頸椎の異常が関与している可能性が考えられます。整形外科では、まずレントゲンやMRIといった画像検査を行い、頸椎の骨や椎間板、神経の状態を詳しく評価します。そして、頸椎に明らかな異常が見つかれば、それに対する治療(薬物療法、リハビリテーション、神経ブロックなど)が行われます。しかし、注意が必要なのは、首のこりや痛みを伴うふらつきの全てが整形外科の領域とは限らない点です。高血圧や自律神経の乱れが、首のこりとふらつきの両方を引き起こしている場合もあります。したがって、まずは整形外科で首の状態を調べてもらい、そこに明らかな原因が見つからない場合は、内科や耳鼻咽喉科など、他の診療科での評価も視野に入れる必要があります。
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グルグル回るめまいとふらつきは耳鼻咽喉科へ
ふらつきの症状の中でも、特に「自分自身や、周りの景色がグルグルと回転するような感覚」を伴う場合は、「回転性めまい」と呼ばれ、その多くは耳の奥にある平衡感覚を司る器官の異常が原因です。この耳の器官とは、「三半規管」と「耳石器」からなる「内耳(ないじ)」のことです。したがって、このような回転性のめまいとそれに伴うふらつきを感じた場合に、まず受診すべき診療科は「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科で扱う代表的なめまいの病気には、いくつかの種類があります。最も頻度が高いのが「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。これは、耳石器の中にある「耳石」という炭酸カルシウムの粒が何らかの拍子で剥がれ、三半規管の中に入り込んでしまうことで起こります。頭を特定の方向に動かした時(寝返りをうつ、起き上がる、頭を洗うために下を向くなど)に、数十秒から1分程度の短い時間、グルグルと激しい回転性めまいが生じるのが特徴です。吐き気を伴うこともありますが、難聴や耳鳴りは伴いません。次に、激しい回転性めまいに加えて、耳鳴りや難聴、耳の閉塞感といった聴覚症状を伴う場合は、「メニエール病」の可能性があります。めまいの発作を数時間単位で繰り返し、進行すると聴力が低下していくのが特徴です。また、風邪などをひいた後に、突然、数日間続く非常に強い回転性めまいと吐き気に襲われ、難聴は伴わない場合は、「前庭神経炎」が疑われます。耳鼻咽喉科では、まず詳しい問診でめまいの性質や持続時間、きっかけなどを確認します。そして、眼の動きを観察する「眼振検査」や、体のバランスを調べる「重心動揺検査」、聴力を調べる「聴力検査」など、専門的な検査を組み合わせて診断を下します。治療は、原因疾患に応じて、めまいを抑える薬や吐き気止め、血流改善薬などが用いられます。良性発作性頭位めまい症に対しては、三半規管に入り込んだ耳石を元の位置に戻すための「理学療法(頭位治療)」が非常に有効です。回転性のめまいは非常につらい症状ですが、その多くは耳鼻咽喉科で診断・治療が可能です。
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ものもらいと間違えやすい下まぶたの他の病気
下まぶたに腫れや赤み、しこりが現れた時、多くの人は「ものもらいができた」と考えがちですが、実際には似たような症状を示す他の病気の可能性も潜んでいます。自己判断で対処してしまうと、適切な治療の機会を逃し、症状を悪化させてしまう危険性もあるため注意が必要です。ものもらいと間違えやすい代表的な病気の一つが「アレルギー性結膜炎」です。花粉やハウスダスト、動物の毛などが原因で起こり、主な症状は強いかゆみと、涙のようにサラサラとした水様の目やにです。まぶたが腫れることもありますが、ものもらいのような局所的な痛みやしこりは伴わないことが多く、両目に症状が出やすいのも特徴です。次に「眼瞼炎(がんけんえん)」は、まぶたの皮膚そのものが炎症を起こす病気です。皮膚が赤くただれたり、まつ毛の根元にフケのようなものが付着したりします。ウイルスや細菌の感染、皮脂の過剰分泌などが原因で、まぶた全体の腫れやかゆみを伴います。また、特に注意が必要なのが「眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)」です。これは麦粒腫が悪化したり、副鼻腔炎から細菌が波及したりして、眼球の周りの脂肪組織にまで炎症が及んだ重篤な状態です。まぶただけでなく目の周り全体がパンパンに赤く硬く腫れあがり、強い痛みや発熱を伴います。視力低下や、目を動かすと痛む(眼球運動痛)、物が二重に見える(複視)などの症状が出た場合は、緊急の治療が必要なため、直ちに眼科を受診しなければなりません。その他、目頭が赤く腫れて痛む場合は、涙を鼻へ流すための管が詰まって炎症を起こす「涙嚢炎(るいのうえん)」の可能性もあります。さらに非常に稀ではありますが、高齢者で治りにくいしこりやただれが続く場合は、「基底細胞がん」や「脂腺がん」といった悪性腫瘍の可能性もゼロではありません。これらの腫瘍はゆっくりと大きくなり、時には出血を伴うこともあります。このように、下まぶたの異常には様々な原因が考えられます。痛み、かゆみ、しこりの有無、症状が片目か両目か、全身症状(発熱など)はあるか、などをよく観察し、少しでも「いつもと違う」と感じたら、安易に自己判断せず、必ず眼科医の診察を受けるようにしてください。
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不整脈の診断で行われる具体的な検査の流れ
循環器内科を受診すると、不整脈の原因や種類、重症度を特定するために、いくつかの系統だった検査が行われます。どのような検査が行われるのかを事前に知っておくことで、受診への不安を和らげることができます。診断の第一歩は、非常に詳細な「問診」から始まります。医師は、「いつから症状がありますか?」「どのような時に症状が出ますか?(動いている時、じっとしている時など)」「症状はどのくらい続きますか?」「動悸は『ドキドキ』と速い感じですか、『ドクン』と飛ぶ感じですか?」「胸の痛みや息切れ、めまいなど、他の症状はありますか?」といったことを詳しく質問します。この問診は、不整脈の種類を推測する上で非常に重要な情報となります。次に、聴診器で心臓の音を聞いたり、手首で脈拍を触診したりする「身体診察」が行われます。そして、基本かつ必須の検査が「12誘導心電図」です。胸や手足に電極を貼り、数分間で心臓の電気的な活動を記録します。この検査で、検査中の不整脈の有無や種類、心筋梗塞や心肥大などの兆候がわかります。しかし、不整脈は時々しか出ないことが多いため、受診時の心電図だけでは異常が見つからないことも少なくありません。そこで行われるのが「ホルター心電図」です。携帯可能な小型の心電計を24時間装着し、仕事中や睡眠中も含めた日常生活全体の心電図を記録します。これにより、一過性の不整脈や、特定の状況下で出現する不整脈を捉えることが可能になります。不整脈の原因を調べるためには、「心エコー(心臓超音波)検査」が極めて重要です。ゼリーを塗った胸の上から超音波の出る機械を当て、心臓の大きさや壁の動き、弁膜症の有無、心臓のポンプ機能などを評価します。心臓に基礎的な病気がないかを確認する大切な検査です。その他、必要に応じて、貧血や甲状腺機能、電解質異常などを調べる「血液検査」や、運動によって不整脈が誘発されるかを調べる「運動負荷心電図」が行われることもあります。これらの検査結果を総合的に判断し、診断と治療方針が決定されます。
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頻尿と喉の渇きは糖尿病の危険なサインかもしれない
水を飲んでも飲んでもすぐに喉が渇き、その結果、飲む量も尿の量も増えて何度もトイレに行く。この「多飲多尿」と呼ばれる症状は、糖尿病の典型的な初期症状の一つであり、決して軽視することはできません。糖尿病は、血糖値を下げる働きを持つインスリンというホルモンの作用が不足したり、十分に効かなくなったりすることで、血液中の糖分(血糖)が過剰になる病気です。通常、腎臓は血液を濾過する際に、体に必要なブドウ糖を再吸収して血液中に戻します。しかし、血糖値が異常に高くなると、腎臓がブドウ糖を再吸収しきれなくなり、尿の中に糖が漏れ出てしまいます。この尿糖が、「浸透圧利尿」という現象を引き起こします。これは、尿中の糖分が、体から水分を一緒に引き連れて排泄される作用のことで、これにより尿の量が異常に増えるのです。体は大量の水分を失うため、脱水状態に陥り、それを補おうとして脳の渇中枢が刺激され、強烈な喉の渇き(口渇)を感じるようになります。そして、喉の渇きを潤すために大量の水分を飲むため、さらに尿量が増えるという悪循環に陥ってしまうのです。この症状を放置していると、体はエネルギー源であるブドウ糖をうまく細胞に取り込んで利用できないため、代替エネルギーとして脂肪や筋肉を分解し始めます。その結果、食事は摂っているのに体重が急激に減少したり、全身の倦怠感が現れたりします。もし、水を飲んですぐに尿が出ると同時に、異常な喉の渇きや説明のつかない体重減少、疲労感などを自覚した場合は、速やかに内科や糖尿病内科などの医療機関を受診し、血糖値の検査を受けることが極めて重要です。