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ためらわずに救急車を!危険な不整脈のサイン
不整脈の中には、症状が軽いものや、放置しても問題ないものもありますが、一方で、脳梗塞を引き起こしたり、突然死に直結したりする、極めて危険なタイプも存在します。そのような危険な不整脈のサインを知っておくことは、万が一の事態に迅速かつ適切に対応し、自分自身や大切な人の命を守るために非常に重要です。以下に挙げるような症状が現れた場合は、絶対に様子を見たり、自分で車を運転して病院へ行こうとしたりせず、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。最も危険なサインの一つが「意識を失う、失神する、あるいは目の前が真っ暗になる」という症状です。これは、心室頻拍や心室細動といった致死性の不整脈により、心臓がポンプとしての機能を失い、脳への血流が数秒間途絶えてしまうことで起こります。意識が戻ったとしても、いつ再び危険な状態に陥るかわからないため、直ちに救急要請が必要です。次に、「強い胸の痛みや圧迫感、締め付けられるような痛みを伴う」場合です。これは、心臓に血液を送る血管が詰まる心筋梗塞が、危険な不整脈を引き起こしている可能性があります。痛みは背中や左肩、顎にまで広がることがあり、冷や汗や吐き気を伴うことも多いです。また、「突然の激しい動悸と共に、立っていられないほどの強いめまいや、息ができないほどの呼吸困難に陥る」場合も、血圧が急激に低下している危険な兆候です。さらに、不整脈の合併症として最も警戒すべき「脳梗塞」のサインにも注意が必要です。特に心房細動という不整脈では、心臓の中にできた血栓が脳の血管に飛んで詰まることがあります。その結果、「突然、片方の手足に力が入らなくなる、しびれる」「呂律が回らない、言葉が出てこない」「片方の口角が下がり、顔が歪む」「視野の半分が欠ける」といった症状が起こります。これらの症状は、不整脈の症状(動悸など)と同時に、あるいは単独で現れることもあります。脳梗塞は時間との勝負です。これらの症状が一つでも当てはまれば、それは緊急事態です。救急隊員が到着するまでの間、可能であれば横になり、衣服を緩めて楽な姿勢で待つようにしましょう。
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スマホ画面の見過ぎがものもらいを招く現代的な理由
現代人の生活に欠かせないスマートフォンやパソコンの長時間利用が、実は下まぶたにできるものもらいの間接的な原因となり得ると指摘されています。この現象は、主に三つのメカニズムによって説明できます。第一に「まばたきの減少によるマイボーム腺機能不全」です。私たちは集中して画面を凝視している間、無意識のうちにまばたきの回数が通常の3分の1から4分の1程度にまで減少しています。まばたきは、涙を目の表面全体に行き渡らせて潤いを保つという重要な役割に加え、まぶたの縁にあるマイボーム腺から脂を分泌させるためのポンプのような働きも担っています。このまばたきの回数が極端に減ることで、マイボーム腺からの脂の分泌が滞り、腺の出口が詰まりやすくなります。これが、痛みを伴わないしこりが特徴の「霰粒腫」を引き起こす直接的な原因となるのです。第二のメカニズムは「眼精疲労とそれに伴う物理的刺激」です。画面を長時間見続けることは、目のピント調節筋(毛様体筋)を酷使し、眼精疲労を引き起こします。目が疲れると、乾きやかゆみ、しょぼしょぼ感といった不快な症状が現れ、結果として無意識に目をこする回数が増えてしまいます。汚れた手で目をこする行為は、手に付着した細菌をまぶたに運び込むことに他ならず、痛みや腫れを伴う「麦粒腫」を発症させるリスクを直接的に高めます。そして第三に「生活リズムの乱れと免疫力の低下」です。特に就寝前のスマートフォン操作は、画面が発するブルーライトが脳を覚醒させ、自然な眠りを促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。これにより睡眠の質が低下し、慢性的な睡眠不足に陥ると、自律神経やホルモンバランスが乱れ、体全体の免疫力が低下します。免疫力が低下した状態では、普段は無害な常在菌である黄色ブドウ球菌などにも容易に感染しやすくなり、麦粒腫を繰り返す原因ともなりかねません。対策としては、20分ごとに20秒間、20フィート(約6メートル)先を見る「20-20-20ルール」を実践し、意識的にまばたきをすることが有効です。スマホとの上手な付き合い方が、現代人の目の健康、ひいてはものもらい予防に不可欠と言えるでしょう。
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お子さんの下まぶたが腫れた時の正しい知識とケア
小さなお子さんの下まぶたがぷっくりと赤く腫れているのを見ると、親御さんとしては非常に心配になることでしょう。子供は大人と比較して、ものもらい、特に細菌感染が原因である麦粒腫になりやすい傾向にあります。その最大の理由は、衛生観念がまだ十分に発達しておらず、汚れた手で無意識に目をこすってしまう機会が非常に多いからです。公園の砂場や園庭で遊んだ後、泥や砂がついたその手で目を触ってしまい、そこから黄色ブドウ球菌などの細菌に感染してしまうケースは後を絶ちません。また、子供は免疫機能がまだ未熟なため、大人であれば問題にならない程度の細菌でも炎症を起こしやすいのです。お子さんのまぶたに腫れや赤み、痛がるそぶりといった症状を見つけたら、まずは速やかに眼科を受診させることが最も重要です。特に乳幼児の場合、炎症がまぶたの奥、眼球の裏側まで広がってしまい、「眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)」という重篤な状態に進行することが稀にあります。これは視力障害に繋がる可能性もあるため、自己判断で市販薬を使用したり様子を見たりするのは絶対に避けるべきです。家庭でのケアとしては、まず何よりもお子さんに目を触ったりこすったりしないように、根気強く言い聞かせることが大切です。目やにが出ている場合は、ぬるま湯に浸した清潔なガーゼやコットンを使い、目頭から目尻に向かって一方向に優しく拭き取ってあげてください。治療は主に抗菌作用のある点眼薬や眼軟膏が中心となりますが、お子さんへの点眼は一苦労です。嫌がる場合は無理強いせず、二人で協力して、一人が優しく抱きかかえ、もう一人が素早く点眼する、あるいは遊びの延長と見せかけたり、眠っている間にそっと点眼したりするなどの工夫が必要です。ものもらいは、はやり目(流行性角結膜炎)とは違い、他人にうつる病気ではないため、基本的には学校や保育園を休む必要はありませんが、プールは医師の許可が出るまで控えましょう。親の冷静な対応と専門医との連携が、お子さんの目の健康を守る鍵となります。
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不眠症の治療、睡眠薬は怖いものか
不眠症の治療というと多くの人がまず「睡眠薬」を思い浮かべ、そして「一度飲み始めたらやめられなくなるのではないか」「副作用が怖い」といった漠然とした不安やネガティブなイメージを抱くかもしれません。確かにかつての睡眠薬には依存性や副作用の強いものが存在しました。しかし現在の不眠症治療で中心的に使われている睡眠薬は、安全性と効果の面で大きく進歩しており医師の指導のもとで正しく使用すれば決して怖いものではありません。むしろつらい不眠の悪循環を断ち切るための非常に有効で頼りになるツールなのです。現在主流となっている睡眠薬は「非ベンゾジアゼピン系」と呼ばれるタイプや「メラトニン受容体作動薬」、「オレキシン受容体拮抗薬」といった新しい作用機序を持つ薬です。これらの薬は従来の薬と比べていくつかの優れた特徴を持っています。まず作用時間が比較的短く翌朝への眠気の持ち越しが少なくなっています。また筋肉を弛緩させる作用が弱いため高齢者で問題となるふらつきや転倒のリスクも軽減されています。そして最も重要な点として長期連用による「依存性」が極めて低く抑えられていることが挙げられます。医師は患者さんの不眠のタイプや年齢、生活スタイルに合わせて最適な作用時間の最適な薬をきめ細かく選択します。睡眠薬の役割は単に眠れない夜に強制的に眠らせることだけではありません。薬の助けを借りて「ぐっすり眠れた」という成功体験を脳と体に思い出させることが非常に重要なのです。眠れないことへの不安や恐怖が和らぎ睡眠に対する自信を取り戻すことで、徐々に薬がなくても眠れる状態へと移行していくことができます。治療のゴールは薬を飲み続けることではなく、最終的には薬をやめて自然な眠りを取り戻すことです。そのためには薬物療法と並行して生活習慣の改善やストレス管理といった根本的な原因へのアプローチが不可欠です。睡眠薬はそのゴールへと向かうための一時的なしかし力強い「杖」のような存在なのです。