秋から冬にかけて、子どもから大人まで、しつこい咳と発熱に悩まされる感染症が流行します。その代表格の一つが「マイコプラズマ感染症」です。この病気は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という非常に小さな微生物によって引き起こされます。細菌のように自己増殖しますが、細胞壁を持たないという特徴から、ウイルスと細菌の中間的な存在とされ、一般的な抗生物質が効きにくいという厄介な性質を持っています。感染すると、数週間の潜伏期間を経て、発熱、全身の倦怠感、頭痛といった初期症状が現れ、その後、乾いた咳がコンコンと出始め、次第に激しくなり、夜も眠れないほどになることも少なくありません。このような頑固な咳が続く症状から、「風邪が長引いているだけだろう」と自己判断してしまいがちですが、放置すると気管支炎や肺炎へと進行することもあるため、適切な診断と治療が重要です。では、マイコプラズマ感染症を疑った場合、何科を受診すればよいのでしょうか。まず第一に考えるべき診療科は、患者の年齢によって異なります。子ども、特に幼児から小学生、中学生であれば、かかりつけの「小児科」が最も適切な選択です。小児科医は、子どもの診察に慣れているだけでなく、同じような症状を示す他の小児特有の感染症(RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、百日咳など)との鑑別診断に精通しています。一方、高校生以上の大人であれば、「内科」あるいは呼吸器疾患を専門とする「呼吸器内科」が第一選択となります。特に咳や痰、息切れといった呼吸器症状が強い場合は、肺炎の可能性を正確に評価できる呼吸器内科が望ましいでしょう。マイコプラズマは呼吸器だけでなく、稀に皮膚や神経、心臓などに合併症を引き起こすこともあるため、初期対応としてこれらの専門科を受診し、全身の状態を正しく評価してもらうことが、重症化を防ぎ、早期回復へと繋がる鍵となるのです。