マイコプラズマ感染症は、幼児期以降、特に学童期の子どもたちの間で集団感染を起こしやすいことで知られています。保育園や幼稚園、学校などで一人が感染すると、咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることによる接触感染で、あっという間に広がることもあります。子どもの咳が2週間以上も続き、特に夜間や早朝にひどくなる、熱は高くないのに咳だけが残る、といった場合はマイコプラズマ感染症を疑い、「小児科」を受診することが重要です。小児科では、まず保護者から詳しい話を聞く問診から始まります。いつから咳が出始めたか、熱の経過、咳の音や性質、家族や学校での流行状況などが診断の重要な手がかりとなります。その後、聴診器で胸の音を聞き、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴や、肺炎を示唆する異常音がないかを確認します。診断を補助するために、喉や鼻の奥の粘液を綿棒でぬぐって調べる「迅速診断キット」が用いられることもありますが、その精度は100%ではなく、あくまで参考の一つです。より確実な診断のためには、血液検査でマイコプラズマに対する抗体の量を調べる方法があります。感染初期と、2週間ほど経った回復期に採血し、抗体の量が著しく上昇しているか(ペア血清)を確認するのが最も確実な診断法ですが、結果が出るまでに時間がかかるのが難点です。また、咳がひどく肺炎が疑われる場合には、胸部X線(レントゲン)撮影が行われます。治療には、マイコプラズマに有効な「マクロライド系」の抗生物質(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が処方されます。しかし近年、このマクロライド系薬が効かない「耐性菌」が増加しており、薬を飲んでも熱が下がらない場合は、別の系統の抗生物質に変更する必要があります。家庭でのケアとしては、十分な水分補給と安静が基本です。咳を和らげるために、加湿器などで部屋の湿度を適切に保つことも有効です。学校保健安全法では、マイコプラズマは明確に出席停止期間が定められた感染症ではありませんが、咳がひどい間は他人にうつす可能性があるため、医師の指示に従い、症状が落ち着くまで登園・登校は控えるようにしましょう。