不整脈の症状は、胸がドキドキする「動悸」だけではありません。多彩な症状が現れる可能性があり、その症状によっては、循環器内科以外の診療科との連携や鑑別が必要になるケースもあります。ただし、大前提として、まずは心臓に起因する危険な状態を除外するために循環器内科を受診することが最優先です。その上で、他の可能性も視野に入れることが重要です。例えば、「めまい・ふらつき・失神」といった症状がある場合、これは不整脈によって心臓から脳へ送られる血液が一時的に不足することで起こります。これは循環器内科で診断すべき重要な症状ですが、一方で「てんかん」や「脳卒中」といった脳神経系の病気でも同様の症状が出ることがあります。循環器内科で心臓に原因が見つからない場合は、脳神経内科や脳神経外科での精査が必要になることがあります。また、「息切れ・呼吸困難」も不整脈のサインです。頻脈によって心臓が空打ち状態になったり、心機能が低下したりすると、肺に水が溜まる心不全を引き起こし、息苦しさを感じます。これは循環器内科の専門領域ですが、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器の病気との鑑別が必要なため、呼吸器内科と連携することもあります。さらに、動悸と共に「手の震え、多汗、体重減少、やたらと暑がる」といった症状がある場合は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」の可能性があります。甲状腺ホルモンは心臓を刺激する作用があるため、頻脈や心房細動などの不整脈を引き起こすのです。この場合は、血液検査で甲状腺ホルモンを調べる必要があり、治療の専門は内分泌内科となります。最後に、強い不安感や恐怖感と共に動悸や息切れ、めまいが起こる場合は「パニック障害」の可能性も考えられます。しかし、パニック障害の診断は、心電図や心エコーなどで心臓に異常がないことを確認した後に行われるべきです。安易に「精神的なもの」と自己判断せず、まずは循環器内科で器質的疾患を除外することが、安全で確実な診断への道筋です。