糖尿病という病気の本当に怖い側面は、高血糖そのものよりも、それが長期間続くことによって引き起こされる全身の合併症にあります。したがって、糖尿病の治療は単に血糖値を下げるだけでなく、これらの合併症をいかに予防し、早期に発見して進行を食い止めるかが極めて重要になります。すでに糖尿病と診断されている方や、治療歴が長い方が次に考えるべき「何科にかかるか」は、この合併症の視点が加わることで、より多角的になります。まず、治療の主軸となるのは、引き続き「糖尿病内科」あるいは「内分泌内科」です。これらの専門科は、血糖コントロールを通じて合併症の発生リスクを管理する司令塔の役割を果たします。しかし、糖尿病の管理は一つの科だけで完結するものではありません。定期的にチェックすべき他の診療科との連携、すなわち「チーム医療」が不可欠となるのです。特に重要なのが「眼科」です。糖尿病網膜症は、成人の失明原因の上位を占める深刻な合併症であり、初期段階では自覚症状が全くありません。そのため、血糖値が安定しているように見えても、糖尿病と診断されたら年に一度は必ず眼科で眼底検査を受けることが強く推奨されます。次に「腎臓内科」です。糖尿病腎症が進行すると、腎臓の機能が失われ、最終的には人工透析が必要になることがあります。定期的な尿検査でタンパク尿の有無などをチェックし、異常が見られた場合には腎臓内科医と連携して治療を進める必要があります。さらに、足のしびれや痛み、感覚の鈍化といった症状は「糖尿病神経障害」のサインかもしれません。また、血流障害と相まって足の傷が治りにくくなることもあり、小さな傷から壊疽に至る危険性もあります。こうした足のトラブル(足病変)については、主治医の診察に加え、場合によっては「皮膚科」や「形成外科」、「血管外科」といった科の受診が必要になります。このように、糖尿病治療は糖尿病内科医を中心としながらも、眼科、腎臓内科、皮膚科など、体の各部位の専門家と連携して進めていくべきものです。合併症に関する不安があれば、まずはかかりつけの糖尿病主治医に相談し、適切なタイミングで各専門科の診察を受けるようにしましょう。
糖尿病合併症が心配な人が選ぶべき診療科