大人の蕁麻疹に発熱が伴う場合、それは単なる皮膚のアレルギー反応ではなく、体内で何らかの炎症や免疫系の異常が起きていることを示唆しています。その原因として、いくつかの病気の可能性が考えられます。正しい対処のためにも、どのような病気が隠れている可能性があるのかを知っておくことは重要です。まず、最も頻度が高いと考えられるのが、「感染症」です。風邪やインフルエンザといったウイルス感染症や、溶連菌感染症などの細菌感染症にかかった際に、その病原体そのものや、病原体が出す毒素に対するアレルギー反応として、蕁麻疹が現れることがあります。この場合、発熱や喉の痛み、倦怠感といった、元の感染症の症状が主体となります。蕁麻疹は、その感染症が治癒に向かうにつれて、自然に消えていくことがほとんどです。次に、注意が必要なのが「薬剤アレルギー(薬疹)」です。風邪薬や抗生物質、痛み止めといった、様々な薬を服用した後に、蕁麻疹と発熱が現れた場合、その薬に対するアレルギー反応の可能性があります。薬疹は、時に重症化し、全身の皮膚がただれるような深刻な状態(中毒性表皮壊死融解症など)に移行することもあるため、原因と思われる薬の服用を直ちに中止し、速やかに医療機関を受診する必要があります。また、より専門的な疾患として、「膠原病」や「血管炎」といった、自己免疫疾患の可能性も考えられます。これらは、本来、体を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身の組織を攻撃してしまう病気です。皮膚の血管に炎症が起きることで、蕁麻疹のような皮疹と、発熱、関節痛といった全身症状が現れることがあります。この場合は、皮膚科だけでなく、リウマチ・膠原病内科といった専門科での精密検査と治療が必要となります。そして、最も緊急性が高いのが、前述の「アナフィラキシー」です。食物やハチの毒などが原因で、蕁麻疹と同時に、息苦しさや血圧低下、意識障害などが急速に進行します。これは、一刻を争う救急疾患です。このように、蕁麻疹と発熱という組み合わせは、軽い感染症から、命に関わる重篤な疾患まで、実に様々な病気のサインとなり得るのです。