お尻から足にかけてのつらい痛みやしびれ。そんな時、病院の待ち時間や検査の手間を考え、「手軽に行ける、近所の整骨院や整体で、とりあえずマッサージしてもらおう」と考えてしまう方は、非常に多いのではないでしょうか。しかし、その安易な判断が、実は症状を悪化させたり、重大な病気の見逃しに繋がったりする、大きなリスクをはらんでいることを、あなたはご存知でしょうか。坐骨神経痛の症状が出た際に、整骨院や整体の前に、まず病院(特に整形外科)へ行くべき、決定的な理由があります。その最大の理由は、「正確な診断ができるのは、医師だけ」であるという、根本的な事実です。整骨院の柔道整復師や、整体院の整体師は、筋肉をほぐしたり、骨格の歪みを整えたりする「施術」の専門家ではありますが、レントゲンやMRIといった画像検査を行ったり、それらの結果を医学的に解釈したり、そして病名を確定する「診断」という医療行為を行うことは、法律で認められていません。坐骨神経痛は、様々な原因によって引き起こされる「症状」の名前であり、「病名」ではありません。その原因が、椎間板ヘルニアなのか、脊柱管狭窄症なのか、あるいは、稀ではありますが、脊椎の腫瘍や感染症、あるいは婦人科系や内科系の病気なのかを特定しないまま、闇雲にマッサージや骨盤矯正といった施術を受けることは、非常に危険です。例えば、椎間板ヘルニアが原因である場合に、腰を強く捻るような施術を受ければ、ヘルニアが悪化し、神経の圧迫がさらに強くなってしまう可能性があります。また、もし痛みの原因が、がんの骨転移といった悪性の病気であった場合、マッサージで時間を浪費している間に、病気は着実に進行してしまいます。まずは、整形外科で、画像検査などを含めた科学的な根拠に基づいて、痛みの「本当の原因」を正確に診断してもらう。そして、その診断結果に基づいて、医師が「マッサージや鍼灸なども有効でしょう」と判断した場合に、初めて整骨院や鍼灸院を、治療の選択肢の一つとして、安心して利用することができるのです。正しい順番で、専門家を頼ること。それが、あなたの体を、そして未来を守るための、最も賢明な選択なのです。