今回の事例研究では、まつ毛の生え際、いわゆるマイボーム腺の出口付近にできた稗粒腫の除去において、眼科と皮膚科がいかに連携し、一人の患者を完治に導いたかを分析します。症例は四十代の女性、Bさんです。Bさんは数ヶ月前から右目の上まぶたの縁に、硬い白い粒があることを自覚していました。瞬きをするたびに異物感があり、時には目がゴロゴロと痛むため、当初は「ものもらい」を疑って眼科を受診されました。眼科での診断は「結膜ではなく、皮膚の附属器官に由来する稗粒腫」であり、視機能には問題がないことが確認されました。しかし、その位置がまつ毛の根元に非常に近く、皮膚科で扱うには眼球へのリスクが高いと判断されました。ここでの治療戦略は、眼科医が「眼球の保護と粘膜の状態管理」を担い、皮膚科医が「嚢腫の確実な摘出技術」を提供するという共同体制でした。Bさんは、皮膚科と眼科が併設されている総合病院の連携外来へ案内されました。実際の処置では、眼科医が専用のコンタクトレンズ型アイシールドを装着させて眼球を完璧にガードし、その状態で皮膚科医が顕微鏡(オペ用ルーペ)を用いて、まつ毛を一本も傷つけることなく稗粒腫を摘出しました。処置時間はわずか十分。Bさんの訴えていた異物感は、排出された角質塊の除去とともに消失しました。この事例が示すのは、稗粒腫は何科という二者択一の議論ではなく、特に目のふちというデリケートな場所においては「科の境界線にある医療」をどう受けるかという重要性です。眼科は目の内側を守るプロ、皮膚科は目の外側を整えるプロ。この両者が重なり合う場所での不調は、双方の知見を合わせることで初めて、安全かつ確実なゴールへ辿り着くことができます。患者である私たちは、こうした診療科間の連携の質を確認し、必要であれば「眼科の先生にも診てもらったほうが良いでしょうか」と提案する主体的姿勢が求められます。Bさんのケースのように、専門領域を融合させた治療を受けることは、後遺症のリスクを最小限にし、生活の質(QOL)を最大化させるための最も賢明な医療の受け方と言えるでしょう。
目のふちの稗粒腫除去における眼科と皮膚科の役割分担事例