私は長年、自分がアルコール依存症であることを認められずに過ごしてきました。毎晩の晩酌が少しずつ増え、気づけば休日の朝からビールを開けるようになり、仕事のストレスを理由に深酒を繰り返す日々。会社の健康診断で肝機能の異常を指摘されるたびに、私は近所の内科を受診して「しばらくお酒を控えます」と嘘をつき、数値が少し下がればまた元の生活に戻る、という不毛なサイクルを繰り返していました。内科の先生は優しく「お酒を減らしましょうね」と言ってくれましたが、その時の私が必要としていたのは、内臓の治療ではなく、止まらない飲酒のブレーキを修理することだったのです。ある日、酔った勢いで家族に暴言を吐き、翌朝の記憶が全くないことに愕然とした私は、ついに自分が「普通ではない」ことを悟りました。しかし、どこに行けばいいのか分からず、スマートフォンの検索窓に「お酒、やめたい、何科」と打ち込みました。そこで目にしたのは、精神科という言葉でした。正直なところ、精神科に行くことには激しい抵抗感がありました。自分は狂っているわけではない、ただお酒が好きなだけだ、という思いが捨てきれなかったからです。しかし、背に腹は代えられない状況に追い詰められ、私は依存症専門のクリニックを予約しました。初めて訪れたその場所は、意外にも明るく清潔で、待合室には私と同じようなスーツ姿の男性や普通の主婦の方々が静かに座っていました。診察室で医師にありのままの現状を話すと、先生は「それはあなたの性格のせいではなく、脳がアルコールを強く求める仕組みになってしまったからです。一緒に治していきましょう」と言ってくれました。その言葉を聞いた瞬間、私は何年も一人で抱えてきた重い荷物をようやく下ろせたような気がして、思わず涙が溢れました。そこから私の断酒生活が始まりました。処方された薬は飲酒欲求を抑える助けになり、週に一度のカウンセリングで自分のストレスの正体と向き合うことができました。内科での治療では決して届かなかった、私の心の奥底にある「寂しさ」や「不安」に光が当てられたのです。現在、私は断酒して二年になりますが、あの時勇気を出して精神科を受診していなければ、今頃は仕事も家族も失い、健康も完全に破壊されていたでしょう。何科に行くべきか迷っている時間が、依存症という病を深刻化させます。もし、あなたがお酒の問題で自分を責めているなら、どうか怖がらずに精神科のドアを開けてみてください。そこには、あなたを裁く人ではなく、あなたを救おうと待っているプロフェッショナルが必ずいます。
お酒がやめられない苦しみを抱えて私が精神科の門を叩くまで