小児科の診察室で、毎年のように保護者の皆さんからインフルエンザ予防接種の効果について質問をいただきます。「打ってもうつるなら意味がないのでは?」という声を聞くたびに、私は小児科医として、子供たちの命を守るためのワクチンの本当の役割を一生懸命に説明しています。子供の場合、インフルエンザで最も警戒しなければならないのは、単なる高熱ではなく、急性脳症や心筋炎といった、数時間で命を奪いかねない重篤な合併症です。特に乳幼児は免疫システムが未熟なため、ウイルスが全身に波及しやすく、脳の血管にダメージを与えるリスクが大人よりも高いのです。インフルエンザ予防接種の効果は、子供において発症を完全に防ぐ率は約二割から六割程度と幅がありますが、脳症などの重症化を阻止する確率は非常に高いことが分かっています。私はよく、ワクチンを「火災保険」に例えます。火事を出さないための努力は大切ですが、万が一火が出てしまったときに、家が全焼するのを防ぎ、家族が逃げ出すための時間を稼いでくれるのがワクチンの役割なのです。また、子供が接種することは、家庭内での二次感染を防ぐ意味でも極めて重要です。学校や幼稚園でウイルスをもらってきた子が、家で高齢の祖父母や赤ちゃんに移してしまう悲劇を、ワクチンの「飛沫拡散抑制力」が最小限にしてくれます。接種の際の痛みで泣いてしまう我が子を見るのは辛いものですが、その一瞬の涙が、将来の大きな病魔から子供を守る盾になることを忘れないでください。最近では痛みを軽減するための工夫をしているクリニックも増えています。私は医師として、科学的なエビデンスを信じています。毎年、インフルエンザで苦しむ子供たちを診てきたからこそ、ワクチンの接種を強く、そして確信を持って推奨し続けます。保護者の皆さんの賢明な判断が、子供たちの健やかな成長と、地域の集団免疫を守る大きな力となるのです。不確かなネット情報に惑わされず、科学という光を信じて、今年も大切な我が子に守護のバトンを渡してあげてください。
小児科医が語る子供の命を守るワクチンの真実