実は私たち医師にとって介護認定の意見書を書く作業は一年の中で最も神経を使いかつ難しい仕事の一つなのですとある地域の診療所を支えるベテラン内科医は語ります。病院の診察室で行われるインタビューの中で彼は医療現場が抱えるジレンマを赤裸々に明かしてくれました。医師の意見書を書くためには患者の病気の状態を把握するだけでは不十分でその人が朝起きてから寝るまでの二十四時間の生活風景を頭の中に描かなければなりません。しかし五分や十分の診察時間で家族の睡眠不足の度合いや本人がトイレで失敗した回数をすべて把握することは物理的に不可能です。最も困るのは家族からの情報が全くない状態で意見書の依頼が届くことですと彼は続けます。自治体から送られてくる書類には空欄が多く医師は自分の記憶や乏しいカルテの記述を頼りにその人の人生の重みを数値化しなければなりません。もし家族が何も言ってくれなければ診察室での元気な姿だけを基に実際よりも軽い判定を招く意見書を書いてしまう恐れがあります。これは医師にとっても患者を裏切るような苦い経験となります。私たちは患者さんの味方でありたいと思っていますだからこそ家族には愚痴で構わないから今困っていることを包み隠さず教えてほしいのですそれが私たちのペンを動かす一番の動力源になるのです。また彼は特定疾病の認定についても触れました。若年性認知症や末期がんの場合どのタイミングで介護認定を申請するかによって本人の受けるケアの質が劇的に変わります。医師は診断を下した瞬間にその後の生活の支障を予測して先回りして意見書の準備を始めることもあります。医療は病気を治すことですが介護認定を助けることは生活を守ることです私たちはその両方の責任を背負っています彼の言葉からは単なる事務作業ではない一人の人間を社会的に守ろうとする強い自覚が感じられました。しかし現実は厳しい側面もあります。多くの医師は診療時間後の深夜にこれらの書類作成を行っており一通にかける時間は限られています。だからこそ家族には医師がそのまま意見書に転記できるような簡潔で具体的なメモを用意してほしいと願っています。専門用語を使う必要はありません。いつどこで誰が何に困ったかという断片的な情報が医師の医学的な知識と結合したとき初めて命を救うための一枚の意見書が完成するのです。インタビューの最後に彼は意見書は私と家族の共同作業の結果ですと締めくくりました。介護認定を受けるにはこの見えない協力体制がいかに機能するかがすべてを決定づけるのです。プロの知性と家族の愛が重なり合ったときにだけ真実の意見書が生まれます。
現場の医師が明かす介護認定意見書を書く際の苦悩と本音