私はかつて自分の体力を過信し、インフルエンザ予防接種の効果をどこか軽視していた時期がありました。若い頃から風邪一つ引いたことがなく、たとえインフルエンザが流行しても自分だけは無縁だと思い込んでいたのです。しかし、ある年の冬、その自信は無残にも打ち砕かれました。予防接種を「面倒だから」と後回しにしていたその年、私は職場で流行していた強力なウイルスをまともに浴びてしまいました。発症から数時間で体温は四十度を超え、これまでに経験したことのない激しい関節痛と悪寒に襲われました。病院へ担ぎ込まれたとき、医師から「予防接種を打っていれば、ここまで酷くならなかったはずですよ」と諭された言葉が今も耳に残っています。結局、私は一週間以上も寝込み、肺炎一歩手前の状態で体力を著しく消耗しました。仕事への穴も大きく、経済的にも精神的にも多大な損失を被りました。翌年から私は心を入れ替え、毎年欠かさず十月中に予約を入れるようになりました。面白いことに、接種を始めてから数年後、再びインフルエンザに罹患したことがありましたが、その時の経過は以前とは驚くほど違っていました。熱は三十七度台の微熱に留まり、二日も寝れば元通りの生活に戻れるほど軽症で済んだのです。これこそが、インフルエンザ予防接種の効果の真髄なのだと身を以て痛感しました。ワクチンは魔法のバリアではありませんが、身体の中に「精鋭の偵察部隊」を配置しておくようなものです。一度大きな痛い目を見たからこそ、私はワクチンの「重症化させない力」がいかに尊いものであるかを誰よりも理解しています。今は家族や友人に対しても、単にうつらないためではなく、いざという時に自分を救うための保険として接種を強く勧めています。健康な時には気づかない、この小さな注射の持つ巨大な防衛力。それを失ってから後悔するのではなく、平時の備えとして大切に扱うことが、一人の大人としての責任ある態度なのだと確信しています。