子供の病気というイメージが強いヘルパンギーナですが、近年、看病していた両親が子供からウイルスをもらって発症するケースが激増しており、大人の場合は子供以上に壮絶な経過を辿ることが臨床事例からも明らかになっています。三十代男性のAさんの事例を紹介しましょう。保育園に通う長男がヘルパンギーナを発症して三日後、Aさんは突然の激しい悪寒に襲われました。体温は瞬く間に三十九度八分まで上昇し、全身の関節痛と頭痛で起き上がることさえできなくなりました。大人のヘルパンギーナにおける最大の特徴は、喉の痛みが「針の山を飲み込むような」と形容されるほど鋭利で激しい点です。Aさんの喉には、子供と同様の水疱が十数個確認されましたが、成人特有の過剰な免疫反応のせいか、粘膜の腫れがひどく、自分の唾液を飲み込むたびに意識が飛びそうになるほどの激痛に苛まれました。仕事は当然休まざるを得ませんでしたが、会社に「ヘルパンギーナで休みます」と言っても、周囲はただの夏風邪だと軽く捉え、そのギャップがAさんの精神的なストレスをさらに増幅させました。結局、熱が下がるまでに五日間、喉の痛みが完全に引き、まともな食事が摂れるようになるまでに二週間近くを要しました。この事例が示唆するのは、大人がヘルパンギーナにかかると、社会的役割を完全に停止させられるほどの破壊力があるという事実です。大人の場合は幼少期に感染した際の免疫が弱まっていることや、ストレスによる基礎免疫の低下が重症化の背景にあります。予防策としては、子供の看病の際に使い捨ての手袋を着用し、残した食事を絶対に口にしない、タオルの共有を避けるといった、病院レベルの感染対策が必要です。もし大人が感染してしまった際のアドバイスとしては、初期の段階で内科ではなく耳鼻咽喉科を受診することを検討してください。耳鼻科では、喉の炎症部位に直接薬を噴霧したり、激痛を和らげるための強力な局所処置が可能になる場合があるからです。また、大人の高熱は心臓や腎臓にも大きな負担をかけるため、無理に仕事へ復帰しようとせず、この期間は身体が「強制終了」を求めているのだと割り切り、徹底的な静養に徹することが、後遺症や慢性的な疲労を残さないための唯一の道となります。夏の終わり、子供が元気になった後に倒れ込む大人が多い現実は、私たちがこのウイルスのしぶとさを再認識すべきであることを物語っています。
大人が感染したヘルパンギーナの壮絶な高熱と経過の事例