私たちが日常的に行っている耳掃除は実は多くの人が必要以上の頻度で行っておりその「しすぎ」が耳の健康を著しく損なう原因となっていることは医学的に広く警鐘を鳴らされています。耳の入り口から鼓膜に至るまでの通り道である外耳道は非常にデリケートな皮膚で覆われておりここには本来自浄作用という驚くべき機能が備わっています。耳垢は耳の奥で作られるのではなく入り口から約一センチから一・五センチほどの場所にある外耳道軟骨部に限定して生成されますがこの部位の皮膚は中心部から外側へと向かってベルトコンベアのように移動する性質を持っており耳垢は放っておいても自然に耳の穴の外へと排出される仕組みになっています。そのため健康な状態であれば耳掃除を頻繁に行う必要は全くなくむしろ耳掃除を「しすぎ」ることによってこの精緻な排出システムを物理的に破壊してしまうことこそが最大のリスクとなります。耳掃除の際に綿棒や耳かきを過度に使用すると皮膚の表面にある保護膜としての皮脂や角質層が削り取られてしまい外気からの刺激や細菌の侵入に対して無防備な状態になります。このバリア機能が失われた状態で微細な傷が生じるとそこから黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込み外耳道炎と呼ばれる激しい痛みや腫れを伴う炎症を引き起こします。さらに深刻なのは耳掃除を「しすぎ」ることで本来外に出るべき耳垢を逆に鼓膜の方へと押し込んでしまう現象です。押し込まれた耳垢が巨大な塊となって固着すると耳垢栓塞という状態になり耳の閉塞感や難聴の原因となります。また耳の中には迷走神経という自律神経の枝が通っており耳掃除の刺激が一時的な快感をもたらすことから依存症のように毎日掃除をせずにはいられなくなる人も多いですがこの快感は皮膚の損傷を伴う危険な代償です。耳が痒いから掃除をするという行為も実は掃除によって皮膚が乾燥しヒスタミンが放出されることでさらなる痒みを招くという負のスパイラルを形成しているに過ぎません。医学的な見地から推奨される耳のケアは耳の入り口付近を濡れタオルで軽く拭う程度で十分であり月に一度程度の頻度を超えて奥まで掃除することは百害あって一利なしと言えるでしょう。耳を大切にすることはすなわち「いじりすぎない」という勇気を持つことであり自身の身体が持つ自浄作用を信じることこそが耳の健康を末永く維持するための最も合理的な方法なのです。
耳掃除のやりすぎが招く外耳道炎のメカニズム